(10) 持物・装身具


1. 薬壺 2. 水瓶 3. 蓮華 4. 如意宝珠 5. 錫杖 6. 宝戟 7. 宝輪 8. 羂索 9. 宝剣
10. 宝経 11. 金剛杵 12. 宝塔・五輪塔 13. 楽器 14. 弓矢 15. 如意宝棒 16. 宝篋 17. 払子 18. 山形・三面宝冠
19.五智宝冠 20. 瓔珞

1. 薬壺
(1) 薬壺は人の寿命を延ばし、医薬の利益を授け、
  様々な病を治す象徴。又、万病を癒す薬が入って
  いると言われる。
(2) 重要文化財指定の薬師如来は247体であるが、
  うち191体が薬壺を持っている。

@薬師如来:
  国宝
  法隆寺講堂薬師寺金堂勝常寺
  醍醐寺霊宝館
  重文:
  興福寺東金堂東寺金堂
  醍醐寺金堂慈恩寺覚園寺
  日向薬師宝城坊多田寺豊楽寺
2. 水瓶
(1) 古代インドの水筒のことで、この中には財宝が
  入っている。
(2) 又、不思議な甘露水が入っており、ふりかけ
  ると穢れが消え、欲望の熱を冷ます。
@九面観音:法隆寺
A百済観音:法隆寺
B虚空蔵菩薩:法輪寺
C十一面観音:
  国宝:室生寺六波羅蜜寺向源寺
道明寺観音寺法華寺聖林寺
  重文:
  遍照寺弘明寺長谷寺奈良博
  海住山寺西大寺法輪寺
3. 蓮華
(1) 蓮華が泥の中にあって泥に染まらないことから
  仏の真理(智恵)を表す。
(2) 蓮華には蕾、半開きの未開敷蓮華、満開の開敷
  蓮華がある。
(3) 観音が左手に持つ蓮華は蕾、または半開きの未開敷
  蓮華とされているが、 如意輪観音は開いた開敷蓮華を
  もつ。
(4) 千手観音は多くの手に紅蓮華、紫蓮華、白蓮華
  と3色の蓮華を持つ。
@虚空蔵菩薩:広隆寺
A聖観音:
  大報恩寺観世音寺滝山寺
B文殊菩薩:
  安倍文殊院西大寺
4. 如意宝珠
(1) 意の如く願いを叶えてくれる宝珠で、中に全ての善い
  行いを納めている。
(2) 火焔宝珠や三弁宝珠などもある。
(3) 仏塔の相輪の最上部や仏堂の頂上に置かれる場合
  がある。
@地蔵菩薩:
  法隆寺宝蔵院東大寺公慶堂
  広隆寺安産寺六波羅蜜寺
  藤田美術館 
A救世観音:法隆寺
B如意輪観音:観心寺大報恩寺
C吉祥天:
  法隆寺金堂観世音寺鞍馬寺
  浄瑠璃寺雪蹊寺興福寺
5. 錫杖
(1) 錫杖を地面に突き複数の先端の輪で音を鳴らす。
(2) 修行僧が野山を巡業する時、猛禽や毒虫などの
  害から逃れるため、音を立てながら歩いた。
(3) 又、家々の門前で乞食(こつじき)するときには、これ
  をゆすって来意を知らせた。
(4) 錫杖は常に浄手(右手)に持ち不浄手(左手)
  に持つことを禁止されている。
@地蔵菩薩:
  法隆寺宝蔵院東大寺公慶堂
  広隆寺安産寺六波羅蜜寺
  藤田美術館
A僧形八幡神:東大寺
B不空羂索観音:
  東大寺興福寺広隆寺
  大安寺観世音寺不空院
6. 宝戟
(1) 仏の 教えを害するものを排除する武器。
  五穀豊穣を授ける法具でもある。
(2) 先端に独鈷杵のついた独鈷戟や、先端が3つに
  分かれた三叉戟などがある。
@増長天:
  法隆寺興福寺東大寺東寺
  当麻寺浄瑠璃寺
  奈良博物館
A降三世明王:東寺醍醐寺
B軍荼利明王:東寺醍醐寺
C大威徳明王:東寺醍醐寺
D不空羂索観音:
  東大寺興福寺広隆寺
  大安寺観世音寺不空院
E因達羅/珊底羅:新薬師寺
7. 宝輪
(1) 仏敵を打ち砕き、煩悩を打ち砕く法具。
(2) グルグル回転し自在に敵を砕破する戦車の車輪の
  ように、釈迦の説法があらゆる所の人々に届くことを
  表わす。
(3) 寺院の建立に際し 地鎮のために堂塔の地下に、
  宝輪が埋められる。
@如意輪観音:岡寺醍醐寺三井寺
  観心寺室生寺神咒寺
A馬頭観音:豊財院大安寺観世音寺
  大報恩寺中山寺馬居寺
  奈良博(浄瑠璃寺)
B青面金剛 :東大寺
8. 羂索
(1) 元はインドの鎖鎌のような武器であった。仏教では、
  羂索を投げ煩悩を縛り付ける。
(2) また、悪の道にいて降伏しない者を縛り付け、善の道
  へ と引き寄せる。
@不空羂索観音:
  東大寺興福寺広隆寺大安寺
  観世音寺不空院
A不動明王:
  醍醐寺理性院醍醐寺三宝院
  金剛峰寺同聚院金剛寺淨楽寺
  奈良博(正寿院)
9. 宝剣
(1) ダイヤモンドのように強固な剣は 迷いや煩悩を断ち
  切る。
(2) 全ての悪を切り伏せるが、特に最も根本的な三つの
  煩悩、貪・瞋・癡を断ち切る。
(3) 文殊菩薩の宝剣は智慧の鋭さを剣に例える。
(4) 不動明王が右手に持っている宝剣は、衆生を救おう
  と志す慈悲の剣とよばれる。
@不動明王:
  醍醐寺理性院醍醐寺三宝院
  金剛峰寺同聚院金剛寺淨楽寺
  奈良博(正寿院)
A持国天:
  興福寺東大寺東寺唐招提寺
  当麻寺浄瑠璃寺
B文殊菩薩: 安倍文殊院西大寺
C虚空蔵菩薩: 神護寺
D伐折羅: 新薬師寺興福寺
E宮毘羅/招杜羅: 新薬師寺
10. 宝経
(1) お経が書かれた円筒形の巻物を経巻という。
(2) 経巻には釈迦の教えがまとめられており、悟りと智慧
  の象徴とされる。
(3) 経巻を手に持つことによって釈迦の智慧を人びとに
  示す。
@広目天:
  東大寺法華堂唐招提寺
  金剛峯寺当麻寺
A梵天: 東大寺
B清浄比丘童子: 金剛峯寺
C婆藪仙人: 三十三間堂
D文殊菩薩: 西大寺
11. 金剛杵
(1) 元はインドの武器だったが密教では法具として重用
  される。
(2) 金剛杵はその名のとおり金剛石(ダイヤモンド)のよう
  に硬いことから、どんなに強い煩悩でも打ち砕くとされ
  る。
(3) 両端がとがった独鈷杵、三本に分かれた三鈷杵、
  五本に分かれた五鈷杵がある。
@執金剛力士: 東大寺
A帝釈天: 東寺
B金剛薩た菩薩: 東寺
C金剛夜叉明王: 東寺
D毘羯羅: 新薬師寺
E愛染明王: 西大寺
12. 宝塔・五輪塔
(1) 釈迦の御骨、通称仏舎利を入れた塔。
(2) 宝塔の中には8万4千の教えと12部経が納めてある。
  宝塔を見る者は大いなる智慧を得る。
(3) 五輪塔は地・水・火・風・空の五大をそれぞれ方形・
  円形・三角形・半月形・宝珠形に石などでかたどり、
  順に積み上げた塔。平安中期ごろ密教で創始された。
@多聞天(毘沙門天):
  法隆寺興福寺東大寺東寺
  唐招提寺金剛峯寺当麻寺
  観世音寺願成就院浄楽寺
A弥勒菩薩: 醍醐寺
B泉涌寺来迎院: 三宝荒神
13. 楽器
(1) 極楽浄土にも音楽(一説には説話)が無数に流
  れている。
(2) 阿弥陀如来と共に死者を迎えに来る供養菩薩の
  中には琵琶や琴などを演奏する。
@迦楼羅: 三十三間堂
A乾闥婆: 三十三間堂
B摩ご羅伽: 三十三間堂
C二十五菩薩: 即成院
D雲中供養菩薩: 平等院
14. 弓矢
(1) 仏の教えを害する ものを排除する。 良縁を得ること
  が出来る。出世をかなえる。
(2) 単なる武器ではなく、弓を引くことで徳を高める。
(3) 仏像から放たれる矢は衆生を正しい道へと導く
  ガイドのようなはたらきをする。
@愛染明王: 放光寺金剛峯寺神童寺
Aあに羅: 新薬師寺
B因達羅: 室生寺
C金剛夜叉明王: 醍醐寺
D金毘羅: 三十三間堂
E安底羅: 広隆寺
F摩利支天: 当麻寺
15. 如意宝棒
(1) 孫悟空が如意棒で敵を払いのけるのと同じように、
  宝棒も悪を追い払うとされる。
(2) 先端にあらゆる願いをかなえる宝珠が付いていること
  から、富や幸運をもたらすはたらきもある。
@大威徳明王:
  石馬寺真木大堂牛伏寺
A多聞天: 薬師寺
B真達羅: 新薬師寺
D安底羅: 興福寺
C馬頭観音:
  観世音寺大報恩寺中山寺
  馬居寺奈良博(浄瑠璃寺)大安寺
16. 宝篋(ほうきょう)
(1) 篋は経典を入れる箱のことで、冥福を授ける法
  具である。
(2) 地中に隠れた宝を授けてくれる。
@文殊菩薩: 興福寺
A善賦師童子: 鞍馬寺
17.払子
(1)本来、動物の毛や麻を原材料にして、束ねて柄を
  つけたもので、蚊や蠅などの虫を殺さず、追い払う道具
  である
(2) 法具では、釈迦の髪の毛に見立てられ、煩悩や穢れ
  を払うための道具となる。あるいは修行者を導くための
  道具として扱われる。
@安底羅: 新薬師寺
A梵天: 東寺
B不空羂索観音:
  東大寺興福寺広隆寺
  大安寺観世音寺不空院
18. 山形・三面宝冠
(1) 冠の前面が山形に立ち上がった山形宝冠(三山冠)は、
 飛鳥時代に多く見られる。
(2) 正面および両耳の上につけた宝飾を冠帯で結んだ
 三面宝冠(三面頭飾)は、白鳳時代に多く見られる。
@山形宝冠
  法隆寺薬王薬上菩薩 
  東博法隆寺宝物館・三尊仏・脇侍143
A三面宝冠
  法隆寺宝蔵院・夢違観音
  東博法隆寺宝物館・菩薩半跏像156号 
  東博法隆寺宝物館・菩薩半跏像157号 
  野中寺・弥勒半跏 像
19. 五智宝冠
 
(1) 主に大日如来が頂く五智宝冠。五仏宝冠ともいい、
  冠中に五智如来の化身が存するので、この名がある。
(2) 観音菩薩は化仏のついた宝冠、勢至菩薩は水瓶が
  ついた宝冠、虚空蔵菩薩は三十五仏が安置された
  宝冠をかぶる。
(3) 法隆寺九面観音などの檀像や十一面観音像は、天冠
  台だけである。頭部に天冠台は残るが、宝冠は亡失した
  例も多々見られる。
(4) 岩手・天台寺聖観音、成島毘沙門堂毘沙門天のよう
  に頭部の前面に山形の立ち上がりをつけたり、筒形
  宝冠をつけた簡易型の例が見られる。
@大日如来:
  東寺講堂臼杵磨崖仏竹林寺
  円成寺金剛寺放光寺龍蔵寺
A弥勒菩薩:
  醍醐寺三宝院室生寺弥勒堂
B虚空蔵菩薩:
  広隆寺東大寺大仏殿文化庁
20. 瓔珞
(1) 仏像の体部を飾るもので、胸だけを飾るもの、胸から
  腰や脚までを飾るもの、胸と腹部を分けて飾るものなどが
  ある。
(2) 胸と腹部を分けて飾る例は、法隆寺の夢違観音像など、
  白鳳時代の像に限られる。
(3) 胸だけを飾るものは、法隆寺の救世観音などがつける
  頸飾と呼ばれる環状の瓔珞が飛鳥時代の例として知られる。
(4) 瓔珞の素材は、金銅仏の場合、本体とともに鋳出する
ことが多いが、木彫の場合は、銅板を打ち抜いたものや、
別木でとりつけるものが多い。
@胸部
  法隆寺救世観音法隆寺金堂・吉祥天
  法隆寺宝蔵院・百済観音
A胸・腰・脚部
  法隆寺宝蔵院・六観音
  東博菩薩立像 
B胸部・腹部
 法隆寺・夢違観音