(9) 十大弟子


十大弟子
  釈迦は 生涯に1250人の直弟子がいたが
  その中で主要な10人の高弟が十大弟子と
  呼ばれる。当初は 弟子名は特定されなか
  ったが、大乗経典により 十大弟子の呼称
  が定着した。
  作例:興福寺、大報恩寺、清涼寺
弟子の出身カースト
バラモン 5人 司祭 頭から出生
クシャトリア 3人 王族 脇から出生
ヴァイシャ 1人 商人 腹から出生
シュードラ 1人 農民 足から出生

 

1) 舎利弗 智慧第一
(バラモン出身)
(1) 持物:両手で団扇をもつ。 1) 多くの経典に釈迦の応答者として登場、教団第一人者、釈迦
  より早逝。

2) 聖なる場所、俗なる場所と分けずに坐禅をせよとの維摩居士
  の忠言。
2) 目けん連 神通力第一
(バラモン出身)
(1) 持物:左手に蓮華、
  右手は体側に下げる。
1) 舎利弗と幼馴染で弟子同期、釈迦より早逝。

2) 餓鬼道に落ちた母親を救出するため釈迦の助言により7月15日
  に行った僧侶による供養が盂蘭盆の由来。
3) 大迦葉 頭陀(托鉢)第一
(バラモン出身)
(1) 持物:右手錫杖 1) 釈迦後継者、第一結集のリーダー。

2) 釈迦の涅槃に間に合わなかった迦葉が遺体に仏足礼拝を行なう
  と薪に火がつき荼毘に付された。

3) 貧しい、裕福と分けずに無心に托鉢せよとの維摩居士の忠言。
4) 須菩提 空解第一 無諍第一
(ヴァイシャ出身)
(1) 持物:左手如意を胸元に、
  右手は腹前にさげる。
1) 長者の子で祇園精舎で出家、仏教の空の思想に精通。

2) 外道から非難や中傷・迫害を受けても決して言い争うことなく円満
  柔和を心がけた。
5) 富楼那 説法第一
(バラモン出身)
(1) 持物:両手で柄香炉を胸元
  から差し出す。
1) 初転法輪後の一番弟子で60種の言語理解する。釈迦と同年の
  最長老。

2) 仏弟子の中でも最も多くの人を導いたので、説法第一といわれ
  る、方便に長けた 庶民派。
6) 迦旃延 論議第一
(バラモン出身)
(1) 印相: 定印・胸前で指を
  絡めて両手を組む。
1) 人を見て法を説く釈迦の教えを分かりやすく解説して「論議
  第一」と言われる。

2) 授戒に必要な比丘10人を5人に削減することで釈迦の理解を得る。

3) 学者タイプで、時には教義広説に苦心して困り顔をする。
7) 阿那律 天眼第一
(クシャトリア出身)
(1) 印相:左手で右手首を掴む。 1) 釈迦の説法での居眠りを恥じ、不眠を誓い失明 したが天眼=智慧
  を得る。阿難の親戚。
8) 優波利 持律第一
(シュードラ出身)
(1) 持物:左手で鉢を持つ、
  右手は説法印。
1) 元は理髪師でカーストの最下位出身 王族に授戒順を譲る。

2) 律儀な性格から戒律に精通し、よく順守した。釈迦死後の
  第一結集
  戒律編纂の中心人物。
9)羅ご羅 密行第一
(クシャトリア出身)
(1) 印相:説法印 1) 釈迦の実子 。 舎利弗と目けん連から指導を受けるも特別扱い
  を嫌い厳しく戒律を守る。

2) 「密行」というのは、人が見ていないところでも戒律を護り続ける
  こと。
10) 阿難 多聞第一
(クシャトリア出身)
(1) 印相:合掌 1) 釈尊の従兄弟で出家後は侍者として生涯釈尊に仕えた。

2) 釈尊の法門を常に間近で聴聞し記憶した多聞第一の尊者。
  経典の始まり如是我聞の我は阿難の事である。

3) 美男ゆえに数々の女難があったが切り抜ける。

4) 釈迦は出家を求めた伯母を当初拒んだが、阿難に説得され
  女人出家を受け入れる。

(10) 神像
 

神像
  本来神道には 造像の習わしはなかったが、
  神仏習合思想により 平安前期から神像が
  制作されるようになった。神像は木彫の坐
  像が多く、男神像は衣冠装束が多く、女神
  像は十二単を着用している
本地垂迹思想
  仏教が興隆した時代に発生した神仏習合
  思想の一つで神道の八百万の神々は、実
  は様々な 仏(菩薩や天部なども含む)が化
  身として日本の地に現れた権現であるとす
  るもの。

1)八幡神


東寺・八幡3神
1) 八幡神は、宇佐八幡宮を源流とする神。神仏混淆、本地垂迹説により、八幡神
  が、八幡大菩薩となり僧侶の姿形をもって表される。八幡神が応神天皇に擬さ
  れたことにより、通常、応神天皇を主神として、比売神(ひめがみ)、応神天皇の
  母である神功皇后を合わせて八幡三神として祀る。

2) 東寺、薬師寺の三体像は著名である。又、八幡大菩薩一体の像であるが、
  東大寺に安置される快慶作の像も有名である。

3) 平安以降、武士の尊崇を集めて全国に八幡神社が勧請されたが本地垂迹
  思想が広まるにつれて八幡神か八幡宮の神として敬われる。

4) 僧形八幡は、蓮華座に座り錫杖と数珠を持って日輪光背を背負う。
(1) 姿形:
@八幡三神像(東寺)
A僧形八幡像(東大寺勧進所)
(2) 作例:
  松尾大社、東寺
  奈良博物館、
  熊野速玉神社
2) 蔵王権現
金峯山寺・蔵王権現
(1) 面相:三眼
(2) 持物:独鈷
(3) 姿形:右足上げ
(4) 作例:金峯山寺、
  奈良博物館
1) 修験者に信仰された悪魔降伏菩薩。役行者が金峯山で感得した修験の神。
  制作が始まった。平安時代後期には容姿形状が一定せず、鎌倉時代初期に
  固定されるようになる。

2) 明王と同じ忿怒相で 青黒肌を持つ。
3) 三宝荒神
泉涌寺来迎院・三宝荒神
(1) 面臂:八面六臂
(2) 面相:忿怒相
(3) 作例:泉涌寺来迎院
1) 日本古来の荒魂(あらみたま)に、古代インドに源泉をもつ夜叉神の形態が
  取り入れられ、神道、密教、山岳信仰などのさまざまな要素が混交して成立
  した。密教の明王像に類似。

2) 三宝(仏法僧)を守る荒々しい神で 特に修験道、日蓮宗で信奉されている。

3) 不浄や災難を除去する神とされることから民間信仰でかまど神として祀られる。
4) 青面金剛
 東大寺・青面金剛
(1) 面臂:一面六臂 青肌
(2) 装飾:手足首に巻蛇、
  髑髏瓔珞
(3) 作例:東大寺
1) 人々の中に住む三尸虫(さんし)が庚申の日に天に昇り人間の悪行を報告し
  疫病を流らす。

2) その日は庚申様と呼ばれる疫病神青面金剛を祀り寝ずの番で 三尸虫を
  見張る (庚申待)。
5) 妙見菩薩
法輪寺・妙見菩薩
(1) 姿形:甲冑を着けた武将
(2) 持物:刀剣を掲げる
(3) 作例:法輪寺
1) 北極星の神格化で長寿延命や除災招福の祈祷を行う。

2) 眼病治療にも霊験がある。

3) 日蓮宗では多くの寺院に妙見宮建立し菩薩を祀る。
6) 牛頭天王
興禅寺・牛頭天王
(1) 頭上:牛面
(2) 持物:斧・羂索
(3) 面相:三面・忿怒相
(4) 作例:松尾神社、興禅寺
1) 京都祇園八坂神社の祭神でスサノオ尊の習合神、疫病を防ぐ神、疫病を
  除く神として敬われる。 又、牛頭天王は、大威徳明王の化身とも言われる。

2) 牛頭天王が沙伽羅龍王の住む竜宮に三女(頗梨采女)をめとりに行く旅の
  途中、貧しい蘇民将来が泊めてくれたお礼に厄除けを約束する「蘇民将来
  之子孫也」の札を渡すと言う民間伝承が広く伝わる。

(11) 七福神
 

七福神めぐり
  七神それぞれを祀る社を順に回り、縁起を呼ぶ。最古
  の都七福神を初めに全国に数百のコースがある。
七神
  福をもたらす七神である七神は一般的には、恵比寿、
  大黒天、福禄寿、毘沙門天、布袋、寿老人、弁財天と
  されておりヒンドゥー教、仏教、道教、神道などの背景
  を持っている。
歴史
  平安初期に最澄が大黒を台所の神として祀ると土着
  信仰の神である恵比寿とセットで祀られる。
  その後、鞍馬寺の毘沙門天が、平安末期には竹生島
  の弁天信仰が盛んになり弁才天が加わる。
  室町時代なると仏教の布袋 道教の福禄寿・寿老人が
  中国から入り七福神が成立する。

1) ゑびす神
【商売繁盛】
1) 日本古来唯一の福の神である。 古くから漁業の神でもあり、後に留守神、さらには商いの
  神ともされ庶民救済の神といわれる。

2) 知恵を働かせ額に汗して働けば福財を授けてくれる。関西では1月10日を「十日戎」と言い、
  今宮戎神社、西宮神社などへ多数の参拝者がある。
2) 大黒天
【開運招福】
1) 元来はヒンドゥー教のシヴァ神で青黒い身体をもつ戦闘神であるが、日本では仏法守護神の
  1人として伝わる。

2) 中世以降、神道の神である大国主命と混同され農耕福徳の神となる。

3) 打ち出の小槌を持ち笑みを浮かべる姿から商売繁盛の守り神とされる。
3) 毘沙門天
【七福即生】
1) 北方の守護神、仏教を守護する神であり、毘沙門天を信仰すると十種の福を得るとされる。

2) 菅原道真や小野道風も信仰していたといわれる。
4) 弁財天
【福徳自在】
1) 元来古代インドに流れていたという聖なる川、サラスヴァティーを神格化した水と豊穣の女神 。

2) 川の流れから音楽、弁舌、学問の守護神となる。

3) 日本では仏法を守護する天部の一員として敵を滅ぼす役割をもちながらも、福徳や財宝を授
  ける女神として信仰されている。
5) 布袋尊
【諸縁吉祥】
1) 中国・唐の時代に実在した僧契此がルーツとされる。中国では弥勒菩薩の化現として信仰される。

2) 鎌倉時代に布袋尊が伝わり、禅画の題材として描かれていた。庶民からは福の神として崇められ、
  持っている大きな袋は「堪忍袋」とみなされた。
6) 福禄寿神
[延寿福楽】
1) 道教での人の寿命を司る南極老人星と中国の泰山に住み人の生死を司る泰山府君を人格化し
  たもの。

2) 幸福・高禄・長寿の三徳を備えており商売繁盛・延寿・健康・除災を祈願する。
7) 寿老神
【不老長寿】
1) 道教思想で老子が昇天して南極老人星になる。その南極老人星を人格化し神となる。

2) 三千年の長寿を保つ玄鹿を従え、人々の難を払う団扇を持っている。

3) 日本では禅宗伝来後に発達した水墨画に寿老人が描かれていた。福財・子宝・諸病平癒・長寿の
  功徳がある。

(12) 八大童子
 

出典
  不動明王に使える童子で中国で撰述された
  八大童子秘要法品という経軌をよりどころ
  とする。
出生
  八大童子は、金剛界曼荼羅の四智如来の
  智恵から出生した4童子と、同曼荼羅の四
  波羅蜜に備わる四つの徳から出生した4童
  子の八大童子からなる。
不動明王
  矜羯羅・制多伽童子は不動明王の使者とし
  て 不動明王二童子として表されることが多
  い。作例:金剛峰寺、延暦寺、願成就院

1) 矜羯羅童子
(こんがら)
(1) 持物:合掌・両手独鈷杵
(2) 菩薩相 白色
(3) 頭上:蓮華冠
1) 矜羯羅はKimkaraの音写で、召使いや奴隷を意味する。小心者
  で従順。

2) 法波羅蜜すなわち慈悲心から生じた使者という。

3) 童子形で白肉色の身色袈裟と天衣を纏い、独鈷杵を指で挟みな
  がら両手で合掌する。
2) 制た迦童子 (1) 持物:右手金剛棒・左手三鈷杵
(2) 面相:忿怒相 ・赤顔
(3) 頭上:団子五髷
1) 制た迦はCetakaの音写で、召使いや奴隷を意味する。

2) 業波羅蜜すなわち方便心から生じた使者という。

2) 赤蓮華色の身色で袈裟は纏わず、髪を五髻に結び、右手に
  金剛棒、左手に金剛杵を持つ。
3) 慧光童子 (1) 持物:右手五鈷杵・左手月輪蓮

(2) 面相:忿怒相 ・
(3) 頭上:天冠
1) 阿しゅく如来の金剛部より日光のように発生した使者なので
  慧光童子という。

2) 袈裟姿の黄白身で天冠を戴き忿怒相にして右手に金剛杵、
  左手に月輪蓮華を持つ。

3) 月輪は、無限の知恵を象徴し、修行者に慈悲を授ける。
4) 慧喜童子 (1) 持物:右手三股鈎・左手摩尼宝

(1) 面相:菩薩相・
(3) 頭上:帽子状の兜
1) 宝生如来の宝部より発生した使者は、福徳と智恵を以て衆生
  を救済する。

2) 慈悲深い微笑で、右手に三鈷杵、左手に如意宝珠を持ち天衣
  を着る。
5) 阿耨達童子
 (あのくた)
(1) 持物:右手独鈷杵・左手蓮華・
(2) 面相:菩薩相・
(3) 台座:竜王座
(4) 頭上:迦楼羅
1) 阿弥陀如来の蓮華部より出現し、蓮華の池水より生じた純粋
  無垢な使者。

2) 阿耨達は南閻浮提の中央にある池の名前である Anavatapta
  の音写。

3) 青い龍に乗り、金色の身色で頭上に金翅鳥王(こんじちょう)を
  せ、右手に独鈷杵、左手に紅蓮華を持つ。
6) 指徳童子 (1) 持物:右手三叉鉾・左手輪宝
(2) 面相:三目夜叉形
(3) 姿形:甲冑
1) 忠徳(ちゅうとく)とも称する。

2)不空成就如来の羯磨部より生じ、前三部(金剛部、宝部、蓮華部)
  の徳を指し、果を得る。

3) 夜叉に似た姿で三目で甲冑を纏い、右手に三叉鋒、左手に羯磨
  金剛を持つ。
7)烏倶婆迦童子
(うぐばが)
(1) 持物:右手拳印・左手金剛杵
(2) 面相:暴悪大笑相・
(3) 頭上:五股冠
1) 烏倶婆迦(うぐはか)とは強敵や凶暴な者などを意味する。

2) 金剛波羅蜜すなわち菩提心から生じた使者とされる。

3) 金色の身色で五股冠を頂いた暴悪の形相で、悪人を折伏
  する。右手に三鈷杵を持ち左手で拳印を作る。
8) 清浄比丘童子
(しょうじょうびく)
(1) 持物:右手五鈷杵・左手経巻
(2) 姿形:剃髪僧侶形・偏袒右肩
1) 福徳心から生じた使者で、比丘姿で袈裟を着る。

2) 比丘は修行中の僧侶で「法宝(三宝の一つ。秩序や掟のこと)」
  をよく護ると言う。

3) 比丘姿で袈裟を着て、右手は五鈷杵を持ち胸の上に、左手は
  経巻を持つ。

(13) その他人物
 
1) 維摩居士 (1) 頭上:頭巾
(2) 作例:延暦寺、興福寺東金堂、
  法華寺
1) 古代インド毘舎離城の長者で、学識にすぐれた在家信者。

2) 病気の際、釈迦の弟子を代表して文殊菩薩が見舞う。そのときの
  問答は有名である。
2) 優填王 (1) 衣服:王服、王冠
(2) 作例:渡海文殊の随員
1) インドの王で釈迦在世中の仏教を保護した王として知られる。

2) 仏教における最初に仏像を造立したといわれる。

3) 清涼寺の釈迦仏像は優填王の勅命による第二の像を模刻したもの。
3) 賓頭盧 (1) 持物:右手宝珠・左手印相
(2) 姿形:剃髪僧侶形
(3) 作例:東大寺大仏殿
1) 元は優填王の家臣から釈迦の弟子で十六羅漢の一人である。大変
  強い神通力の持ち主。

2) 説法が他の異論反論を許さず獅子のようであるため獅子吼第一と
  言われる。

3) 日本では像を堂の前に置き、撫でると除病の功徳があるとされる。
4) 善膩師童子 (1) 持物:左手に宝筺
(2) 作例:鞍馬寺
1) 毘沙門天と吉祥天の間に生まれた子。

2) 信仰する者の前に現れて福徳を授ける。

3) 毘沙門天像の脇侍。
5) 善財童子 (1) 印相:合掌
(2) 頭上:団子髷
(3) 作例:渡海文殊の随員
1) インドの長者の子に生まれ、仏教に目覚める。文殊菩薩の勧めにより
  菩薩の道を得るため53名の様々な指導者を訪ねる。世間と出世間の話
  を聞くことで修行を積み重ね最後に普賢菩薩の下で悟りを開く。

2) 渡海文殊では魔よけとして文殊菩薩を先導する。