14.六道(界)



六道(初期仏教)
1) 元々、六道転生は、バラモン教で
 説かれていたもので、初期仏教・部
 派仏教において受け継いできた
2) 個人の善行、悪行によって転生先
 の六道が決定される。善行を行う者
 は幸福な天界・人間界・修羅界に転
 生し、悪行は苦痛を伴う畜生道・飢
 餓道・地獄道に転生する。
3) この輪廻転生から解脱するには
 瞑想修行を積み重ね禅定に入り自
 己の内面的な変化と精神的成長が
 必要となる。
六道(大乗仏教)
1) 大乗仏教(日本の伝統宗派)にな
ると、霊魂を含めすべての事物や出
来事は、無ではなく 存在するが、他
の事物や状況、時間、空間といった
 様々な縁起の法則に基づいて常に
 生滅変化する空の概念になる。
2) しかし、俗習として残るお盆や追
 善供養などにおける霊魂の存在は
 認めている。
3) 又、方便としての六界は残り、各
 人が日常生活の中で経験する苦悩
 を六界に例える。善行を行い、悪行
 を避ける日々の行動で死後は苦悩
 のない浄土に生まれ変わると云う。
自力本願
1) 密教では、この世の肉体は仏の
 成り代わりであり修行をすれば誰で
 も生きたまま悟りを開き、仏になれ
 る。 死後には、大日如来と一体化し
 て仏の位になり密厳浄土や極楽浄
 土に居住する。
2) 禅宗では坐禅をする人間は既に
 仏であるから 悟りをえて自力で 涅
 槃の世界へと向かって行く。故人は
 葬儀のあと仏の弟子となる。
3) 日蓮宗では生前、唱題信行に励
 み生きながら仏となることを目指す。
 死後は釈迦如来の霊山浄土へ行く
 とされ る。
極楽往生
1) 浄土教は、他力教・易行道とも云
 う。現世では自らの力で悟りを得る
 ことは困難であると認識し、阿弥陀
 仏に対する信仰と帰依を示す。
2) 念仏を唱えることで、阿弥陀如来
 の本願他力に頼り、来世の極楽浄
 土での往生を願う。仏の導きにより
 浄土で悟りを得る。
3) 念仏を唱えれば救われと云う他力
 本願思想により、在世に苦しむ庶民
 を救済する教えとして急速に発展し
 広く信じられて来た。浄土系信者の
 日本の全仏教信者数に占める割合
 は7割弱になる。 

三善趣 天界・人間界・修羅界
この世で善行をした人が死後に行く世界。
1) 天界
須弥山上空の世界:
  (無色天、色天、
  四空居天)
須弥山中腹、山頂:
  (二地居天)
(1) 天人が住む天界には無色天、 色天、 六欲天(四空居天・二地居天) の3天界がある。

(2) 天人は空を飛び、享楽の生涯を過ごすが、死に際しては身体が汚れて悪臭を放
  つなどの五衰の苦しみが現れる。

(3) 仏教に出会うこともないため解脱は出来ず死後は六道を転生する。

(4) 詳細は下記(16)にて解説。
2) 人間界
須弥山を囲む大海に浮か
ぶ閻浮提
(1) 人間が悩まされる四苦八苦とは「 生・老・病・死」の四苦に
  @愛別離苦:愛する者と別れる苦しみ。
  A怨憎会苦:怨み憎しむ者に会う苦しみ。
  B求不得苦:欲しいものを手に入れることができない苦しみ。
  C五陰盛苦:身心を形成する肉体的(色),精神的現象(受、想、行、識)に執着する
  苦しみ。以上の四苦が加わり八苦となる。

(2) 人間界は自力で仏教に出会える唯一の場。
3) 修羅界
須弥山の北、巨海の底 (1) 修羅道は阿修羅が住み、終始戦い争うために苦しみと怒りが絶えない世界。

(2) 生前に自分と他者を比較し、常に他者より優れていたいため他人を蹴落として自分
  の地位を獲得したり自分より優れたものに対する嫉妬や怒りから醜い争いをした者
  が落ちる世界。

(3) 帝釈天との戦いに敗れ刀利天を追放された阿修羅の住む、嫉妬、自慢、自大の世界。
三悪趣
(1) 畜生道・飢餓道・地獄道
  悪行を重ねた者が死後に落
  ちる苦悩に満ちた3つの世界
(2) 血途、 刀途、 火途
  三途の川 の三途でそれぞれ
  三悪趣(畜生道・飢餓道・地獄
  道)に対応。
4) 畜生道(血途)
人間界と同じ閻浮提 (1) 畜生道は鳥・牛馬・虫など互いに相い食む畜生の世界。種類は約34億種あり
  苦しみを受けて死ぬ。

(2) 畜生道とは:生前に本能の赴くまま食欲、淫欲、睡眠欲に溺れる、
  愚痴や妬みが強く暴力で他人を蹴落とし傷つけたりする
  思慮分別が足りず眼前に囚われ愚痴の心を起し欲望のままに行動する
  以上の者が落ちる世界。
5) 餓鬼道(刀途)
閻浮提の地下1千キロ
(1) 餓鬼道は刀杖で迫害され腹が膨れた姿の餓鬼の世界。
  自分中心に考える ケチで欲が深く布施をしない人 が落ちる世界。

(2) 餓鬼は常に飢えと乾きに苦しみ食物、飲物を手に取ると火に変わり、決して
  満たされることがない。腹ばかりふくれあがり、のどは針のように細く、手に
  る水や食物は濃い血膿や炎と化してのどを通らない。

(3) 施餓鬼とは旧暦7月15日に地獄にいる餓鬼に対して施しを行い、この世にい
  る自分たちの極楽往生を願う行事。

(4) 子供は貪るように食べることがあるため、餓鬼(ガキ)が比喩的に広く用いられる。

6) 地獄道(火途)
閻浮提の地下1万キロ
(1) 罪人は罪の重さに応じて八大地獄に落されて罪を償わせる。
(2) 八大地獄:
  @等活地獄 (殺生) D大叫喚地獄(殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言)
  A黒縄地獄(殺生、盗み) E焦熱地獄(殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見)
  B衆合地獄(子いじめ、浮気) F大焦熱地獄(殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、
  邪見、犯持戒人:尼僧・童女などへの強姦)
  C叫喚地獄(殺生、盗み、邪淫、飲酒) G阿鼻(無間)地獄(父母殺害など特に罪重)

(3) 親殺しなど最も罪の重い者が二千年もかけて落ちて行く地獄の最下層にある阿鼻地獄
  では、四方八方が火炎に包まれ毒や火を吐く虫や大蛇に苛まれ熱鉄の山に追われるなど
  一番苦痛の激しい地獄 である。


15.須弥山と三界
 
(1) 須弥山:

(2) 地下:



(3) 九山八海:



(4) 四大洲:










(5) 中腹(四大王衆天)



(6) 頂上(刀利天)

仏教の宇宙観にある想像上の霊山。 世界の中心をなす高山。

須弥山の地下には地輪(金輪),水輪,風輪が順に重なる。その最上層をなす金輪の
最下面が大地の底に接する際となっており、これを金輪際という。このことが、物事
の最後を表して金輪際と言うようになった。

須弥山を取り囲み、大小七つの環状山脈が海上に浮かび上がる。七山脈は、黄金で
出来ている。 須弥山世界の外郭をなし鉄で出来ている鉄囲山と須弥山を合わせて
九山八海と言う。

鉄囲山の内側の海に下記の四大洲がある。四大洲にはそれぞれ、二つの中洲と500の
小洲が付属している。四大洲と中洲には人が住む。
  @東勝身洲( とうしょうしんしゅう) ・音写では弗婆提 (ほつばだい)・東南アジアに例える。
  住民は、信心深いが愚昧で真言を理解しない。
  A南贍部洲 (なんせんぶしゅう)・音写では閻浮提 (えんぶだい)・中国大陸に例える。
  住民は、欲望に弱く争乱が多い 。
  B西牛貨洲 (さいごけしゅう) ・音写では瞿陀尼 (くだに)・インド大陸に例える。
  住民は、求道に長け長寿である。
  C北倶盧洲 (ほくくるしゅう) ・音写では鬱単越 (うったんおつ)・シベリア大陸に例える。
  住民は、好戦的で薄情だが、悪人は少ない 。

中腹には、四天王が盟主となる欲界地居天第1天を形成する。各四天王は仏法を守り須弥山
を囲み外海に浮かぶ四大洲(東勝身洲、南贍部洲、西牛貨洲、北倶盧洲)を守護する。 この天
に住む者の身長は5キロ、寿命は500歳で、その一昼夜は人間界の50年に相当する。

頂上には、帝釈天の善見城を中心とした刀利天(三十三天)とで 欲界地居天第2天を形成する。
四方には各8つの城があり、その所属を支配する天部の衆徒や神々が住んでいる。これに
善見城を加えて計33天となる 。
1) 三界 無色界・色界・欲界
 

(1) 天界の無色界と色界を梵天界という。

(2) 欲界は天界の六欲天と五道(人間界、修羅界、畜生界、飢餓界、地獄界)からなる。

(3) 以上を三界と言うが、実質は六道と同じ。

(4) 三界に家なしとは三界には安らぐことのできる場所はない。三界の輪廻転生
  を超え解脱した仏陀の浄土世界に真の家がある。

2) 二十五有 三界・六道と同じ
(1) 三界・六道を25種に再分類したものを二十五有と言う。
  @四悪趣(地獄・餓鬼・畜生・修羅) 4界
  A四洲(鬱単越・閻浮提・瞿耶尼・弗婆提)、4洲
  B欲界の6天、色界の4禅天、無色界の4天の計14天
  C色界四禅天から無想天を、初禅天からは大梵天を独立させ、四禅天の上層五天
  を指す浄居天を加えて計3天

(2) 千手観音は通常42臂を持つが、合掌手2手を除く40の各々の手に二十五有の世界が
  あるとして掛けて千手とする。

3) 欣求浄土・厭離穢土 極楽往生
(1) 平安中期の源信「往生要集」の中での言葉。
  厭離穢土:この穢れた国土を厭い離れる。
  欣求浄土:阿弥陀如来の極楽浄土への往生を欣求。

(2) 浄土宗を信仰していた 徳川家康は「厭離穢土、欣求浄土」を旗印にする。

4) 禅定 色界、無色界への
瞑想の修行

(1) 人間界と六欲天には普通の善業で転生できるが、色天、無色天に転生するには
  瞑想修行により禅定に入る必要がある。

(2) 禅定とは、心を一点に定めて心を静める仏教での瞑想法。定まった状態・静まった
  状態も意味する。悟りの助けのためには大変有効な修行方法。

(3) 色界の物質対象を通して心を制御する四禅定と無色界の心だけで心を制御する四禅定
  をまとめて四禅八定と言う。これに瞑想修行の最終段階である想受滅 (滅尽定) を加え
  て九次第定と呼ぶ。

5) 滅尽定・想受滅 瞑想修行の最終段階
(心の完全滅却)

(1) 無色界の禅定(非想非非想処)の先にある瞑想状態で、心の働きが一切尽きてなくなり、
  全く平穏静寂な、心のあらゆる動きが全く止滅した状態とされる。

(2) 滅尽定では、心の状態が全く止滅し、身体のはたらきもその間ほとんど止まる。飲食や
  排泄は、もちろん、呼吸もほぼなくなり、心臓の鼓動も微細になり、肉体の活動全体が
  ほぼ完全に休止状態となる。生きているのか、死んでいるのか、分らないような状態と
  なる。

(3) 滅尽定から戻るには、予め、滅尽定から醒める時間を決める。滅尽定の状態のままで
  居続けられる期間は、最長七日間という。


16.天界
 

(1) 天界は、衆生が生死流転する六道世界の最上部にある。無色界・色界・六欲天
  の3世界から成る。無色界と色界を梵天界という。

(2) 六欲天は6層・色天は18層、無色天は4層の計28天に区分される。

(3) 須弥山の上空には無色界(4天)、色界(18天)、欲界(4天)から成る天界26天が
  浮ぶ。

(4) 須弥山の頂上と中腹には各々刀利天(三十三天)と四天王天とがあり欲天2天を
  形成する。

(5) 天人は不死ではなく死ねば他の世界の衆生同様、生前の行により六道を転生する。

(6) ボロブドゥール遺跡は、基壇が欲界、その上は色界、最上部が天人のいる無色
  界となる。

1) 無色天(界)
 
(1) 真理の観察力と心の安定状態がさらに進んで物質を超越しており体の大きさは無く
  寿命だけがある世界。

(2) 物質的なものが存在しないため、天としての盟主も存在しない。 欲望も物質的条件
  も超越し、精神作用だけの禅定の世界。

(3) 身体も瞑想の対象になる物質さえもなく、何も対象とせず、心だけで心を制御し瞑想
  状態に入る。これを無色界禅定と呼び、四段階がある。

無色天・四禅天
@非想非非想処
 ・有頂天

A無所有処

B識無辺処

C空無辺処

(1) 心理作用の想があるのでもなく、ないのでもないと観じる処。
  有頂天: 三界は有(う)ともよばれ、その頂上にあるこの天が有頂天。

(2) 何も存在しないと観じる処。

(3) 意識の無限を観じる処。
 
(4) 空間は無限に観じる処。

無色天・四禅定
@非想非非想処
  (心自身の滅却)

(1) 何も意識せず心さえなくし、意識はおろか、意識しようとする衝動さえも起こさせない
  禅定状態をいう。極めてわずかな弱い心の想念があるだけでほとんど無想に近い
  禅定の境地。

(2) 心自体を滅することは不可能で、実際には想が起こるのか起こらないのか分からない
  ほどに心の存在は微かにして、もちろん意識などは全く起こらない。

A無所有処
  (心の内外虚空化)

(1) ここでは、自立する心さえ意識しない 、何も存在しないと観察し、達観する境地になる。

(2) いかなるものもそこには存在しない三昧となる禅定。

B識無辺処
  (心の内側活性化)

(1) 心が、制約を受けず自由で、無限であり、且つ、揺ぎなく活発に活動している状態になる。

(2) 空無辺処を完全に超え、心の働きは限りのない無辺であるという識無辺処になる。

C空無辺処
  (心の外側虚空化)

(1) 不苦不楽の禅定から物質・事象に向ける意識を完全に外し、消し去ることで、物質に
  触れる意識も、迷う意識も無くなる。肉体は、空間、小宇宙となる。

(2) 空だけが残り、さらに瞑想することで虚空は無辺であるという空無辺処に達する。

2) 色天(界)

(1) 色天は欲天とひとしく物質的世界ではあるが、清浄な物質だけがあるとされる。 欲望は
  超越したが、物質的条件にとらわれる世界。

(2) 色天に住む天人は、欲や煩悩は断つが、物質や肉体の束縛からは脱却していない。
  男女の区別がなく、光明を食する。

(3) 修業者が、瞑想修行の深さにより取得したそれぞれの禅定段階に応じて、住む禅天が
  決まる。四禅定と四禅天とは表裏の関係にあり、四禅天に生まれ変わるには禅定修行
  が必須となる。

(4) 色界は四禅天の十八天からなり、それぞれに盟主・神がいるが、最上層の盟主は大自在天
  で、元はヒンドゥー教の最高神にして破壊神のシヴァ神である。

(5) 十八天は禅定修行者の内的な心に対応し、外的な世界との関係を示す。

色天・18禅天
第四禅天 (9天)
盟主:大自在天

(1) 天名・盟主:
  @色究竟天:下記参照 E無想天:精神作用がない天界
  A善現天:良く見える天人の天界 F広果天:凡夫転生の最高天界
  B善見天:楽しそうな天人の天界 G福生天:凡夫で福ある者の天界
  C無熱天:心配などの熱が無い天 H無雲天:雲地がない第四禅天の最初の天が無雲天。
  D無煩天:煩悩のない楽な天界

(2) 大自在天
  ・元々はヒンドゥー教のシヴァ神の異名で、万物創造と破壊をつかさどる最高神。
  ・仏教の中に組み入れられ仏法守護の神となる。色界最上層の色究竟天 に住み 三千
  世界の主として 一切衆生の願望を成就させる。

(3) 色究竟天:
  ・色天最上層にあり、法華経では有頂天・阿迦尼タ天とも言う。盟主は大自在天
  ・物質形体を有する色界の最高天を究める場所であるから色究竟天。大自在天・有頂天
  とも呼ばれる。
  ・修行を極めて有頂天に達することはこのうえない喜びであり、転じて得意の絶頂を意味
  する。
  ・有頂天で、修行を怠ったり、邪念を起こすと、[九天直下]から転落する。

(4) 浄居天:
  ・色天第四禅(九天)の上層五天(色究竟天、善見天、善現天、無熱天、無煩天)を浄居天
  と呼ぶ。
  ・同天に住む不還果・阿那含と云われる五聖者(自在天子、普華天子、遍音天子、光髪
  天子、意生天子)を合わせて一尊とし五部浄居天と言う。
  ・煩悩を離れて清浄となった不還果や阿羅漢が住居できる天界で、寿命が尽きればその
  まま仏と成る。

第三禅天 (3天)
(1) 天名・盟主:
  @遍浄天:浄光が満ちる大梵天
  A無量浄天:無量浄光の梵補天
  B少浄天:浄光が出ている梵衆天

第二禅天 (3天)
(1) 天名・盟主:
  @光音天:雷鳴の光を放つ大梵天
  A無量光天:無量光を放つ梵輔天
  B少光天:光明を放つ梵衆天

初禅天 (3天)
盟主:大梵天

(1) 天名・盟主:
  @大梵天:大梵天・梵天の王
  A梵輔天:大梵天を補佐する大臣
  B梵衆天:一般の梵天の神々

(2) 大梵天は、元々、ヒンドゥー教の三大神の1つで万物の根源とされるブラフマーである。
  仏教に取り入れられて仏法の守護神として天部の神となる。

(3) 大梵天が行幸する時には第二天・梵輔天の輔相(大臣)と第三天・梵衆天の天衆が
  前行する。

(4) 釈尊はじめ諸仏は広く長い舌を梵天まで伸ばして説法したとされる。欲界を越えるほど舌
  が長く、決してうそをつかないことを象徴。

(5) 古代インドのサンスクリット語(梵語)は梵天の創造といわれる。

色天・四禅定
(瞑想修行)
第四禅定
  (幸福感の消滅)

(1) 心が揺れ動き苦の元となる幸福感を無くし、不苦不楽の清らかで平安なる禅定に入る。

(2) 物質・事象に触れても心の揺らぎが起こらない、喜悦感も幸福感もなくした平安状態の
  不苦不楽の禅定。

(3) 色界四禅は、最高の瞑想修行の場である。

第三禅定
  (喜悦感の消滅)

(1) ウキウキする喜悦感から離れることで、心が、平安になり、幸福感だけを身体で感じる。

(2) 物質・事象に素早く反応する喜悦感が外れ、落ち着いた平安の幸福感だけが残る。

第二禅定
  (思考の消滅)

(1) 欲界を切り離し自我が消滅し他者と統一された心に、更なる禅定を行うことで物質・事象に
  影響される思考や雑念が無くなる。物質・事象が周囲で起きていることは分かる。

(2) 本当にリラックスし、雑念が起きず心が穏やかになり、喜悦感と幸福感に満ちる。

初禅定
  (自我の消滅)

(1) 心を一点の物質対象に集中し、 日常の欲と悪から切り離す 瞑想で、自我を消滅 し喜悦感と
  幸福感に満ちた楽の状態を作る。思考や雑念はあっても自我の消滅により他者との一体感
  (統一感)が生まれる。

(2) 心は、思索や探究心を伴う物質・事象の影響下にあるが、欲界の煩悩から完全に離れて
  自我が消滅し他者と統一される。喜・楽と共にある状態になる。

3) 六欲天

(1) 六欲天へは信心の経験のない凡夫でも五戒や十善戒を守り、施しを行い善行に励む
  ことで、転生できる。

(2) 性欲や食欲などの欲望を持つ衆生が住む世界。住居は宝石がちりばめられた光り
  輝く宮殿であり、全ての天子は20才、天女は16才のままで、その美しさは死ぬまで
  衰えることは無いと言う。

(3) 六欲天には、空居天4天と地居天2天の6階層がある。

欲天・第六天
 (空居天第4天)
他化自在天
 (第六天魔王波旬
盟主:伊舎那天

(1) 須弥山の上空に浮ぶ空居天第4天。六欲天の第6層すなわち最上層。

(2) ここの天人は他の欲界の神々が創作した欲望対象を自在に受け入れて 楽しむ。異性
  との 交わりはお互いに見つめあうだけで満足する。

(3) 天人の寿命は16,000年で、その一昼夜は人間界の1600年に相当するという。

(4) 盟主の伊舎那天は、大自在天の変化神とも言われる東北の守護神である。別名を
  第六天魔王波旬とも言う。織田信長が武田信玄に送った返書に第六天魔王を自称。

(5) 釈迦が断食や厳しい苦行で衰えた身体を川で清め、樹下に坐していたときマーラと呼ば
  れる悪魔が近づき、数々の誘惑や恐怖を仕掛けたが、釈迦は一向に動じなかった。つい
  に悪魔は降伏し、仏法を守護する神になった。この悪魔マーラが第六天魔王と言われる。

欲天・第五天
 (空居天第3天)
楽変化天 (化楽天)
(1) 須弥山の上空に浮ぶ空居天第3天。

(2) 欲天を下から数えて第五番目の天。この天の住人は自ら妙楽の境地をつくり出して楽
  しむ。長寿で、楽しみが多い世界とされる。異性との交わりは向き合って微笑みあうだ
  けで満足する。

(3) 天人の寿命は8000年で、その一日は人間界の800年という。

(4) 自ら作り出した幸福や快楽に溺れ、その行為自体が迷いの原因だと気付く事も出来ず、
  無明なまま寿命が尽き、人間を含む悪道へと転生する。

欲天・第四天
 (空居天第2天)
兜率天 (覩史多天)
盟主:弥勒菩薩

(1) 須弥山の上空に浮ぶ空居天第2天。

(2) 兜率 (とそつ)、音写では覩史多(とした)は、梵語のトゥシタで、五感のすべてを満足させる
  ようなものが揃っているという意味。異性との交わりは手を握るだけで満足する

(3) 内外に二院があり、三万二千の宮殿よる外院には天衆が住む。内院には弥勒菩薩の兜率
  浄土がある。弥勒はここに在して説法し釈迦の滅後56億7000万年後に、閻浮提に下生
  成仏する時を待っている。

(4) 天人の寿命は4000年で、その一日は、人間界の400年に相当する。

(5) 兜率天浄土に生まれ変わることを願う兜率往生の思想が生じ、阿弥陀仏の極楽往生との
  優劣が争われた。兜率天浄土が欲界中の世界である点が攻撃され阿弥陀の浄土が優勢
  となった。

欲天・第三天
 (空居天第1天)
夜摩天 (焔魔天)
盟主:焔摩天

(1) 夜摩天は須弥山の上空に位置する空居天第1天。

(2) ここに生まれた者は五欲の楽しみを受ける。光明にあふれ、昼夜がなく、歓楽を受ける世
  界とされる。異性との交わりは軽く抱き合うだけで満足する。

(3) 天人の寿命は2000年で、その一昼夜は人間界の200年に相当する。

(4) 夜摩天の夜摩はヒンドゥー教において冥界を支配するといわれる死神ヤマから来ており、
  盟主の焔摩天は ヤマが仏教に取り入れられ天部の神になったもの。

欲天・第二天
 (地居天第2天)
刀利天 (三十三天)
盟主:帝釈天

(1) 刀利天は、須弥山の頂上にある。刀利は梵語トラーヤストゥリンシャの音写。原語は33で
  33種の天または天神からなる世界を意味する。楼閣、苑林、香樹に満ち、欲界に属する
  楽園である。

(2) 異性との交わりは、精水は出さず血が騒ぐだけの享受はあるが、冷たい風を出して熱い
  欲望をさます。

(3) 天人の寿命は1000年で、その一日一夜は人間界の100年に相当する。

(4) 盟主の帝釈天が住む中央の善見城(喜見城)をめぐって四方に32人の輔相大臣
  の天があり、三十三天(城)とも言う。

(5) 釈迦の生母摩耶夫人は死後ここに転生したが、釈迦は彼女に説法するためにここを訪れた。

欲天・第一天
 (地居天第1天)
四大王衆天 (下天)
盟主:四天王

(1) 四大王衆天は、須弥山の中腹にある。四天王が住し、八部鬼衆を支配し、仏法を守り須弥
  山の海に浮ぶ四大洲(東勝身洲、南贍部洲、西牛貨洲、北倶盧洲)を守護する。須弥山頂上
  の刀利天の主である帝釈天の外臣である。人間の住む南贍部洲は増長天が守護する。

(2) 異性との交わりは、精水は出さず血が騒ぐだけの享受ではあるが、冷たい風を出して熱い
  欲望をさます。

(3) 天人の寿命は500年で、その一昼夜は人間界の50年に相当する。

(4) 下天の1日は人間界の50年、「人間五十年下天の内をくらぶれば夢幻の如くなり」と謡われる。