(2) 技法





1) 割り首 内刳りの技法が発展する過程で生まれた技法。
像の首の付け根に丸ノミを入れて、一旦割り離なして顔面を造作し再度接合する 。
体部と頭部の分業が可能になる。体幹部の干割れが顔に繋がらない等の利点がある。
藤原時代から始まり鎌倉時代以降になると、ごく一般的技法。
2) 差し首 首から上を別材で造り、差し込む構造。
鎌倉時代になると、頭部と躰部とを割り首にせず、はじめから別材で造り、
首ほぞで接合する差し首の方法が多くなる。
運慶作の 浄楽寺阿弥陀如来の頭部は四材の矧木で首の根を体部に差し込む。
3) 内刳り(うちぐり) 像の内部を空洞にして、重量の軽減、干割れの防止を行う。
平安中期までの一木造像は、内刳りがないか、小さくて、干割れが生じる例が多い。
鎌倉時代になると、運慶作品に見られる上げ底式内刳りが見られる。
4) 背刳り(せぐり) 木材の内部を均一に刳り、乾燥収縮を容易にし、乾燥・収縮による干割れを防ぐ。
立像は背中から、座像は背部や像底から刳り、背中からをとくに背刳という。
背刳りは像の背中から内部を刳り空洞にした後、別材の板で蓋をする。
5) 彫眼 仏像の目を木から彫り出し、彩色などで表現する技法。
6) 黒曜石 瞳に黒輝石等を嵌入したもので、白鳳から奈良時代にかけての塑像にみられる。
東大寺戒壇院四天王像や三月堂執金剛神像、新薬師寺十二神将像などがある。
平安時代初期には、数は少いが木彫にも使用されており興福寺東金堂四天王像、
唐の渡来仏である東寺兜跋毘沙門天に見られる。
宝菩提院の菩薩半跏像は瞳に黒珠を嵌めこむ。
7) 玉眼 平安時代末期に、水晶を加工して、像の内側から嵌め込み、内側に瞳を描き、後ろ
から紙を当てる玉眼が発明された。
玉眼の最古例は長岳寺の阿弥陀三尊像と言われる。運慶の仏像では、如来像には玉
眼を用いていないが、例外的に初期作である円成寺の大日如来坐像は 玉眼である。
奈良時代の塑像は黒目に石を前から嵌め込む。玉眼は、『内刳り』という木彫仏像
の内部を空洞にする技法とマッチして、内部から水晶を嵌め、彩色している。
8)錐点 錐点は、仏像の身体の表面に錐で穿たれた、目印の穴。木彫仏を彫る際に、目鼻や
口など重要なポイントの位置の座標点として、また髪際や膝張りなど全体のシルエ
ット、プロポーションの比例をきっちりととるために穿たれた。
さらに錐点は、座標点を決めるだけでなく、どこまで彫り進むかの深さを決める目安
点になっている。
錐点を穿つ深さを決めておいて、錐点が消えるところまで彫り進めれば、造形の凹
凸のレベルも定めることができる。
平安後期から始まり鎌倉〜江戸期の慶派の仏像に多く見られる。